過去の事例

 建物ができて、いざ入居して、使用してみると様々な問題が発生します。問題が発生するということは、必ず、原因があり、それは、事前に防止することができます。建物調査して現況を把握して、その原因を特定することにより、解決することができます。そして、何よりも大切なことは、その原因をつくらないことです。

  ここでは、実際に過去に依頼された不具合調査の一部の事例を紹介します。その原因と対策を考察してみると、共通していえることは、いずれも、施工が不適切であったことです。これを見ていただくと、工事監理をしっかりと行い、適切な施工をすることがいかに大切かがよく解ると思います。

事例1 家中が湿気ており、結露がひどい

■ 状況
 家全体がやたら、湿気を感じる。結露も激しく出る。床板は、腐食し、押入れはカビが発生している。照明のスイッチから水滴が出て、ショートした。天井に点検口を開けたりしたが、大きな問題は無かった。
 しかしながら、床下を見ると、床全体が浸水していた。根太、床板は、腐食し体重をかけると床が抜けてしまった。

■ 原因
 
浴槽下の排水口が詰まり、オーバーフローした排水が浴槽裏の給湯管の取り合いの穴から流れ出たことが原因であった。

■ 対策
 
1階の床全体が湿気で腐食しており、部分的な補修では不可能であるため、リフォームを兼ねて、全てをやり替えをした。

事例2 玄関が浸水した

■ 状況
 新築して間もなかったが、ある時に大雨が降った。すると、玄関ホールの壁と床の取り合い部分から水が浸入し、一面、水浸しになった。

■ 原因
 
ベースと壁の立上りの打ち継ぎ部分に止水板が入っていなかった。その打継ぎは、地盤よりも低く、打ち継ぎ部の防水処理も不十分であった。

■ 対策
 
打継ぎ部分が地盤より下になるように地盤を下げて、水はけを良くするために土間コンクリートを打設。土間コンクリートの先端に側溝を設けて、水は建物に集めることなく、側溝に集めるようにする。 打継ぎ部分は、十分すぎるくらい、防水処理を行う。

事例3 外壁から雨漏りしている。

■ 状況
 新築して間もなかったが、ある時に大雨が降った。すると、外壁から雨漏りした。

■ 原因
 
外壁サイディングの継目部分、サッシュ廻りには防水処理がさていない。合板と合板の継目の部分には、下地が入っておらず、下地自体もまともに固定されていない。

■ 対策
 
外壁を全てめくり、骨組み状態にして、下地からやり替える。下地のつくり方、サイディングの貼り方は、必ず、メーカーの指定しているやり方を確実に守り、施工する。

事例4 台風で屋根が飛んでいった

■ 状況
 新築して間もなかったが、ある時に台風が来た。すると、笠木がめくれて、一部の屋根が飛んでいき、雨漏りを起こしている。

■ 原因
 
笠木を留めている釘の長さが短すぎる。

■ 対策
 
メーカーが指定している所定の長さのビスで、所定の工法により全体的に葺き替える。

事例5 新築して間もないのに掘り込み車庫の壁と土間の打継から漏水している

■ 状況
 新築して間もなかったが、雨になると、壁と土間の打継から漏水している。

■ 原因
 
土間コンクリートを打設する際に、通常、止水板といって、外部からの水の浸入を防ぐゴム状の板を設置するのであるが、それが、できていなかった。

■ 対策
 漏水している部分の外壁面の土を全て撤去して、コンクリート露出状態にして、ベースコンクリートと壁の打継部分を防水する。

事例6 ひょんなことで床下を見ると、基礎がジャンカだらけ

■ 状況
 新築して10年になるが、ひょんなことで、床下に入ったところ、基礎の立上り全般的にジャンカ・豆板だらけである。また、底盤のコンクリートには、至るところにひび割れが見られる。

■ 原因
 
コンクリート打設時において、締め固めが全くできておらず、型枠を解体後、粗悪なコンクリートにもかかわらず、補修もできていない。また、底盤のコンクリートにひびが入ったのは、打設時に底盤に関しても十分な締め固めができておらず、鉄筋下部の水が浮上して空洞になったところにコンクリートが入り込み鉄筋上部にひびが入ったものと思われる。

■ 対策
 健全な基礎に比べて、強度が落ちていることは明らかであるために、コンクリート表面に炭素繊維シートを貼り付け補強する。

 

事例7 窓廻りから雨漏りがした

■ 状況
 窓のサッシュ廻りから水が浸入して、内壁の合板に染みが付着している。外壁をめくってみると、サッシュ廻りには、水が溜まっている。

■ 原因
 
サッシュ廻りは、まともに下地が入っておらず、サッシュを固定されているビスが効いていない。また、防水テープが劣化して腐食している。

■ 対策
 外壁を下地まで全て撤去して、軸組にして、下地からやり替える。合板を所定の工法で貼り、サッシュ廻りは防水テープを隙間なく貼り、サイディングとサッシュとの取り合いは、10mm程度の隙間を開けて、コーキングを施す。

 

事例8 筋かいがまともに留められていない

■ 状況
 耐震リフォームを行ったが、あちこちから不具合が出る。これは、本当に耐震補強も大丈夫かと不安に感じて、一部、壁をめくったところ、筋かいを取り付けるところにガス配管が干渉して、筋かいが欠かれている。また、筋かいと柱との隙間が異常に大きかったり、金物にビスが取り付けられていない。他も疑われ、めくったところ、同様に、数ヶ所、同じように不具合が見られる。

■ 原因
 筋かいを取り付けるところに設備の配管が干渉して取り付けることができなかったようである。本来、設備配管が干渉するのであれば、配管を迂回させるか、筋かいの取付場所を変えるかしなければならない。また、大工の技術が未熟であり、監理者は、それを見逃している。

■ 対策
 配管を迂回させて、障害物が無いようにして、所定の方法で筋かいを取り付けし直す。

事例9 天井から雨漏りがした

■ 状況
 台風が来ると和室の天井から雨漏りする。天井板は、ふやけて、垂れ下がっている。

■ 原因
 和室の上部がバルコニーである。バルコニーの笠木と壁の取り合いに水をかけると、雨漏りする。笠木をめくると、下地の木が腐食している。笠木と壁との取り合いの立ち上がりが不足している。

■ 対策
 腐食している下地を取り替える。防水シートを包み込むようにして、巻く。笠木に十分な立上りをつくり、手摺の立上り壁との取り合いにも防水シートを笠木の立上りにかぶせ、コーキング処理をする。

事例10 壁から雨漏りがした

■ 状況
 和室の壁から全体的に雨漏り跡がある。壁の上部からじわっと出ている。外部を見ると、下屋根から大きなひび割れが発生している。コーキングはしてあるが、劣化して効いていない。解体してみると、庇・筋かい・柱は腐食してしまっている。

■ 原因
 染みが出ている外部に下屋根と庇があるが、その間のひび割れから壁内部に水が廻っている。壁をめくり、調査してみると、庇の立ち上がりがほとんど無く、また、複雑な納まりになっており、防水紙も立上り部分に重なっていない。庇の裏から水が廻ったようだ。

■ 対策
 腐食している庇、筋かい、柱を取り替える。庇には、十分な立上りを設け、防水シートをそれにかぶせ、しっかりと止水処理を行う。

事例11 車庫の天井のコンクリートが落ちて、鉄筋が出ている

■ 状況
 築35年の掘り込み車庫がある住宅。鉄筋コンクリート造の車庫の天井で、コンクリートが剥落して、鉄筋が露出している。その鉄筋は、錆びて、腐食している。また、ジャンカがある。

■ 原因
 コンクリート打設時において、鉄筋とコンクリートに適正なかぶりが確保できておらず、コンクリートの中性化により、鉄筋が錆びて、膨張してコンクリートを押し出した。

■ 対策
 腐食している鉄筋の錆びを取り除き、防錆剤の塗り、コンクリート補修剤(樹脂モルタル)を塗り込む。

事例12 家が大きく傾いている

■ 状況
 築30年の木造住宅。リビングの床にパチンコ玉をおくと、転がる。建具を開けると床に擦れる。建物周辺の土間タイルには亀裂が入っている。レベルで傾きを測量すると、建物の端と端で12cmの高低差がある。

■ 原因
 傾斜地にであり、擁壁をつくり、盛土した上に家がのっている。家は、盛土した方に傾いていることから、盛土部分が沈下して、建物全体が傾いた。擁壁をつくって、十分な転圧、地盤改良などの処理ができていなかった。

■ 対策
 沈下している部分の基礎が出るまで掘削し、基礎の下部にジャッキをかまして、建物の持ち上げる。

事例13 駐車場の天井から雨漏りして、白いコンクリート汁が車に付着する

■ 状況
 あるマンションの自走式駐車場の天井から雨漏りする。その雨漏り汁は、白く、下の車に付着する。その上部を見ると、あちこちに水溜まりがある。

■ 原因
 駐車場の床面に防水をしていないのが原因。コンクリートにひびが入り、そのひびから、水が浸透して、階下の天井から雨漏りした。

■ 対策
 床面のコンクリートに塗膜防水を施す。

事例14 マンションの廊下に水が溜まる

■ 状況
 あるマンションの廊下に雨が降ると水溜まりができる。その水溜まりは、特にエレベーターホールに多く見られ、すべりやすく、子供、老人が転倒するのではないか、危険な状況である。

■ 原因
 適切に勾配がとれていないのが原因。コンクリートの直仕上であるので、施工が困難であったと思われる。時間を十分にかけて、コンクリートの上にモルタルで仕上げれば問題はなかったと思われる。

■ 対策
 適切な勾配がとれるようよう斫ったり、塗り足したりできたら良いが玄関の敷居で高さが決まっているために是正するのは、困難な状況である。

事例15 バルコニー手摺のコンクリートが爆裂して、鉄筋が露出している。

■ 状況
 あるマンションのバルコニー手摺足元のコンクリートが複数箇所、爆裂して鉄筋が露出し、その鉄筋も腐食している。コンクリートの破片を計ると厚みが10mmである。

■ 原因
 コンクリート打設時において、鉄筋とコンクリートに適正なかぶりが確保できておらず、コンクリートの中性化により、鉄筋が錆びて、膨張してコンクリートを押し出した。

■ 対策
 腐食している鉄筋の錆びを取り除き、防錆剤の塗り、コンクリート補修剤(樹脂モルタル)を塗り込む。

事例16 換気状況は良いが土が湿っていて、土台にカビがついている。

■ 状況
 築20年の住宅において、床全体が湿っていて、カビ臭いように感じる。

■ 原因
 床下を調査してみると、換気口は適切についているが、土全体が湿気ている。よく見ると、床下の地盤面は、外周の地盤面よりも低く、外周に降った雨水が内部の方まで浸透しているようである。それが原因で基礎コンクリート、床材にカビがついている。

■ 対策
 一番、良い方法は、床下に防湿シートを敷いて、その上に土間コンクリートを打設して、そのコンクリート面の高さが外周の地盤面より高くなるようにするのが一番である。しかしながら、高くつく。簡易な方法としては、床下全面に調湿木炭を敷いたりする。
 可能であるならば、外周の地盤を床下の地盤より下げて、土間コンクリートなど打設しても、かなりの効果が期待できる。

事例17 本来、90×45mmの筋違であるはずが、実際は、45×45mmの筋違が入っている。

■ 状況
 築2年の住宅において、本来、90×45mmの筋違であるはずが、実際は、45×45mmの筋違が入っている。

■ 対策
 45×45mmの筋違は、壁倍率の設定が無く、一般的に90×45mm か、もしくは、90×30mm である。図面においては、90×45mm のダブルで計算されていた。であるので、現況では、図面通りの強度が担保されていないので、図面の通り、90×45mm に入れ替える必要がある。

筋違が45×45である

  筋違が45×45である

   
筋違が45×45である

  筋違が45×45である

事例18 新築して間もないのに外壁に多数のひび割れが発生した

■ 状況
 新築して間もなかったが、外壁モルタル塗りに多数のひび割れが入った。建物全体に広がっている。

■ 原因
 
モルタルの塗り厚さ通常よりも薄い、モルタルの練った時の配合が悪い、開口部廻りのメタルラスの補強が十分でないなどの原因が考えられる。

■ 対策
 ひび割れを起こしている部分のモルタルをめくり、再度、メタルラスを適切な工法で、モルタルを適切な配合で、適切な厚みでもって、やり直す。また、ひび割れ部分を溝バツリしてコーキング防水処理をして、追従性の高い厚吹きの吹付材で吹き直しをする。

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