耐震診断の実際

 ここでは、実際に耐震診断をどのようにして行うのか、そのチェックポイントを説明します。ここでの耐震診断は、一般財団法人日本建築防災協会発行の2012年改訂版「木造住宅の耐震診断と補強方法(一般診断)」について説明します。
 

現地調査

 調査のチェックポイントとして、

  • 地盤・基礎の調査
  • 建物の仕様
  • 劣化状況の確認
  • 床下・小屋裏の調査
  • ヒヤリング

これらを調査・確認することにより、耐震診断を行います。

地盤・基礎の調査

土間に沈下、亀裂などないか

土間に沈下、亀裂などないか

地盤

 地盤の状況を正確に把握すること必要です。不同沈下を起こしていないか、状況を見て、普通か、悪いか非常に悪い地盤かを判断します。アプローチ廻り、犬走りや車庫の土間コンクリート、塀・擁壁ににひび割れ・亀裂・目違いなどないかチェックします。造成地などは、特に慎重な調査が必要です。

基礎にひび割れはないかチェック

基礎にひび割れはないかチェック

基礎

 基礎の調査では、基礎の断面形状、鉄筋の有無などが重要になってきます。通常、鉄筋コンクリート造の健全な基礎が最も強く、無筋やブロック基礎は弱いのです。
 コンクリートのひび割れ、ジャンカ、コンクリートの剥落による鉄筋の露出などは、強度低下になり、耐震性に影響します。

建物の仕様

屋根の仕様をチェック

屋根の仕様により、建物の重量を判断する

建物重量

 建物の重量により、地震時において、建物の揺れ方が変わります。屋根が重たくなればなるほど、大きく揺れて、建物は倒壊しやすくなります。屋根に土が載って、瓦葺きで土壁であれば、最も、倒壊しやすくなります。通常、非常に重たい建物、重たい建物、軽い建物の三通りに分けられます。

外壁の仕様を地

外壁の仕様をチェック

外壁の材種

 外壁に使用している材料、工法の違いにより、地震時において、強度が違ってきます。最も、強いの構造用の合板が外壁に貼られている場合であり、モルタル塗り、サイディング貼の順に弱くなります。仕様が何か解らないようであれば、不明となり、評価の対象外となりますので、しっかりとした調査が必要です。

建物の形状をチェック

建物の形状をチェック

 建物の形状

 建物の形状も地震時おける強度に影響がでます。地震に最も強い形状は、正方形であり、細長くなればなるほど、また、歪な形状になればなるほど、弱くなり倒壊しやすくなります。また、増築などしていて、それが、完全にひっついておれば、弱くなります。分離してるのか否かもチェックする必要があります。

図面より壁の配置をチェック

図面より壁の配置をチェック

 壁の配置

 地震に対抗するには、壁がどのように配置しているかがポイントとなります。地震に対抗する壁のことを耐力壁といいますが、その耐力壁は、筋かいや構造用の合板などで構成されています。その耐力壁が、どれだけの量があるのか、バランス良く配置されているのかをチェックする必要があります。

劣化状況の確認

 一般診断の場合は、耐震性を判断するのに劣化状況を把握することが重要です。木造住宅の場合、建物の内部に水が浸入して、木材の腐食や蟻害により、梁・柱・土台などの構造材の強度が落ちることが、地震が発生した際に倒壊する最も大きな要因となります。したがって、これらの劣化状況を正確に把握して、改善しなければなりません。

外部

外壁にひび割れ、苔などないか

外壁にひび割れ、苔などないか

外壁仕上げ

外壁には、モルタル塗り、サイディング貼、木製板貼などの種類がありますが、それぞれの劣化状況をチェックします。各仕上材の種類により、若干の違いはありますが、ひび割れ、苔、シール切れ、変退色、割れ、剥落、めくれなどないかをチェックします。

耐震診断-樋のチェック

樋の劣化状況のチェック

軒樋・縦樋

 軒樋・縦樋に変退色・さび・割れ・ずれ・欠落などがないかをチェックします。樋が劣化していると、外壁などに雨水などがかかることになり、漏水の原因となります。漏水すると構造材が腐食し、強度が落ちて、地震時に倒壊に至ることがありますので、診断の重要なポイントとなります。

耐震診断-屋根のチェック

屋根の劣化状況のチェック

屋根葺き材

 屋根葺き材には、主に金属葺きと瓦、スレート葺きがあります。金属葺きは、変退色・さび・さび穴・ずれ・めくれなどがないか、瓦、スレート葺きに関しては、割れ・欠け・ずれ・欠落がないかをチェックします。少しでも、このような劣化があると、雨漏りの原因となります。

露出した構造材のチェック

露出した構造材のチェック

露出した躯体

 木造の場合は、母屋や桁、柱などが露出していたりする場合があります。これらが、劣化していると、耐震強度が落ちて、地震時に倒壊の原因となります。これらに、水浸み痕、こけ、腐朽、蟻道、蟻害などがないか、入念なチェックが必要です。劣化があれば、改善する必要があります。

バルコニーの劣化状況をチェック

バルコニーの劣化状況をチェック

バルコニー

 バルコニーのチェックとして、手摺壁と床の防水、排水状況のチェックが必要です。手摺壁は、外壁のチェックと同じ要領です。床の防水、排水の状況が悪いと雨漏りの原因となります。防水に剥がれ、ひび割れ、シール切れ・ひび割れがないか、ルーフドレンに劣化、詰まりなどないかをチェックします。

内部

雨漏り、結露などないかチェック

雨漏り、結露などないかチェック

一般室

 内壁、窓下において、水浸み痕、はがれ、亀裂、カビなどがないかをチェックします。
 これらが見られると、屋根やバルコニー、外壁などからの雨漏りや結露などが原因であることが多く、梁・柱・土台などの構造材が腐食している可能性があります。また、建具の開閉状況もチェックします。

タイルの亀裂、めくれをチェック

タイルの亀裂、めくれをチェック

浴室

 浴室は、家の中で最も、多く、水を使用する所であり、柱・土台などの構造材が腐食したり、蟻害にあう可能性が高いところです。特にタイルの隙間、窓・扉との取り合いから、水が浸入して、柱・土台が腐食しているケースが多いのです。水浸み痕、変色、亀裂、カビ、腐朽、蟻害などないかチェックします。

畳をめくり、床の状況のチェック

畳をめくり、床の状況のチェック

床面

 床面をチェックして、傾斜があれば、不同沈下を起こし、建物が傾いている可能性があり、地盤は良くないといえます。
 床の振動や床鳴りがあれば、雨漏りがあったり、換気状況が悪かったりして、土台・大引き・床板などが腐食している可能性があります。

床下・小屋裏の調査

耐震診断-基礎のチェック

基礎コンクリート状況のチェック

床下

床下には、耐震性の確認するのに必要な情報が多々あります。換気状況が悪ければ、土台・柱の腐食、蟻害、カビの原因となります。基礎のひび割れ、コンクリートの剥落、鉄筋露出などはないか。また、土台と基礎を緊結しているアンカーボルトの配置、腐食状況のチェックも重要です。

耐震診断-小屋裏・天井裏のチェック

筋かいの緊結状況のチェック

天井裏・小屋裏

 天井裏・小屋裏をのぞくと、筋かいの配置や金物の緊結状況、内壁の下地であるボードの仕様がわかります。また、換気状況が悪ければ、桁梁・柱の腐食、蟻害、カビの原因となります。雨漏りはしていないか、それによる桁梁・母屋・垂木・野地板に腐食はないかもしっかりと見ます。

 

ヒヤリング

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ヒヤリング

 実際に住んでいる人にヒヤリングすることも重要です。これは、健康診断でいうと問診になります。
 建物状況について、築年月日、増築の有無、劣化状況、建具の開閉状況、雨漏りの有無などを詳しくヒヤリングして、調査では解らなかった部分を補います。

鉄骨造、鉄筋コンクリート造になると、見方が変わってきますが、考え方は同じです。
これらの調査が終了し、耐震診断専用プログラムにデーターを入力すると、評点という形で耐震診断結果が出来ます。
  

耐震診断の結果

 ここでは、一般財団法人日本建築防災協会発行の2012年改訂版「木造住宅の耐震診断と補強方法(一般診断)」における耐震診断結果としての評点について、説明します。

 評点は、以下のように4段階に分けられます。

評 点 判      定
1.5~ 倒壊しない
1.0~1.5 一応、倒壊しない。
0.7~1.0 倒壊する可能性がある。
~0.7 倒壊する可能性が高い。

 これは、阪神・淡路大震災級の地震(震度6強)が来た場合、評点が1.0以上であれば、一応、倒壊しないという判断となります。これが、1.0以下であると、倒壊する可能性があり、補強して下さい、という判断です。耐震補強工事をする場合には、1.0以上になるように計画します。

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