耐震補強工事の事例

耐震補強

ここでは、実際に行った補強工事の事例を紹介します。
耐震補強工事は、(財)日本建築防災協会「木造住宅の耐震補強の実務」に基づいて行います。

耐震補強工事には、以下のような方法があります。

  • 耐力壁の設置
  • 屋根の軽量化
  • 劣化改善
  • 基礎の補強

これらの方法を詳しく説明します。

 

耐力壁の設置

耐力壁を設置する方法として、いろいろとあるのですが、以下の方法を紹介します。

  • 耐震ボードの設置
  • 筋かいの設置
  • 構造用合板の設置

 

耐震ボードの設置

 ここでは、既製品で(一財)日本建築防災協会の住宅等防災技術評価を取得したものを使用しています。この工法は、筋かいや通常の構造用合板を使用するのとは違い、天井・床を解体しなくても、壁を補強することができます。
 筋かいや通常の構造用合板を設置する場合では、天井・床を解体しないと、筋かいを設置することができません。天井・壁を解体・復旧する必要がありませんので、その分、低コストで工期も短縮されます。
 所定の強度を得るためには、メーカーの指定した材料、工法を採用しなければなりません。指定通りにしないと、所定の強度が得られない場合があります。

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解体前の状況

 和室において、真壁となっています。耐震ボードは、和室でも洋室でもどちらにおいても使用することができます。

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解体したところ

 解体すると既存の筋かいが見られます。

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金物の設置

 土台と柱、梁と柱の取り合いには、必ず、補強金物を設置します。この金物の設置により、地震時においては、柱が梁・土台から外れなくなります。金物には、いろいろな種類があり、そこの部分にかかる強さにより、金物の大きさが決まります。

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下地の設置

 耐震ボードの下地をつくったところです。壁下地の設置の仕方にも決まりがあります。その決まり通りにしないと、地震時において、その性能を発揮することはできません。

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壁ボードの設置

 耐震ボードを貼ったところです。

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 ビス間隔の確認

 ボードを貼るのにビスの間隔が決められています。そのビスの間隔をスケールを当てて、確認しています。

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 完了

 耐震ボードにクロスを貼って、工事前の状況に戻して完成です。耐震ボードに直接、クロスを貼ることができます。

筋かいの設置

 リフォームで天井、床もやり替えることが解っている場合とか、間仕切り壁を新設する場合には、筋かいを設置します。筋かいには、写真のようにダブルで入れる場合とシングルで入れる場合があります。ダブルで入れる方が強いです。
 阪神・淡路大震災で建物が倒壊した原因の一つとして、筋かいが柱・梁・土台から外れてしまい、筋かいとしての役目を果たす事ができなかった例が多々ありました。そこで、金物を柱・土台にしっかりと留めて筋かいが外れないようにします。

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筋かいの設置

 耐震診断の結果、耐力が不足している部分、間仕切りの変更で新たに壁をつくる場合に、耐力壁として、筋かいを設置します。

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筋かい金物の設置

 筋かいを設置する際には、筋かいと柱と所定の金物で補強する必要があります。これにより、地震時に筋かいが柱・土台・梁から抜けないようにします。

構造用合板の設置

 通常の構造用合板を使用する場合です。構造用合板は、普通のベニヤと違い、耐震目的で作られ、強度の高いものをいいます。使用する構造用合板は、日本農林規格 (JAS) で定められたものを使用します。釘・ビスの種類、打ち方、間隔など細かく決められていますので、その決まり通りに施工することが大切です。

耐力壁の設置-現況 
 解体前の状況 

玄関の横にある角の外壁の状況です。モルタル塗りの上に吹付タイル仕上げです。

耐力壁の解体 
  解体したところ

合板を貼る部分をダイヤモンドカッターを入れて解体したところ。合板は、梁と柱・土台に掛かるように貼るので、その部分を解体します。

耐力壁の設置-ホールダウン金物 
 使用接合金物

公益財団法人日本住宅・木材技術センターにて承認されたZマーク表示金物を使用します。「ち」というのは、国土交通省告示1460号で定めらた表示記号です。金物の大きさ・強さの基準を示します。

耐力壁の設置-ホールダウン金物の設置 
 接合金物の設置

柱が梁から外れないように接合金物の設置。柱頭、柱脚の右と左、各面につき、4ヶ所取り付けします。

耐力壁の設置-構造用合板使用ビス 
 構造用合板を貼るための耐震ビス

構造用合板を貼るために専用の耐震ビスを使用しています。ビスの間隔で壁の強さが変わってきます。

耐力壁の設置-構造用合板ビス間隔の確認 
 耐震ビスの間隔の確認

耐震ビスを打ったところで、差し金を当てて、そのビスの間隔を確認しています。

耐力壁の設置-構造用合板 
 完成

構造用合板の取り付け完了。この上に防水シート、メタルラスを貼って、モルタル塗り、吹付をします。

 

屋根の軽量化

 耐震診断において、建物は、「非常に重たい」「重たい」「軽い」の三種類に分けられます。大地震において、上部が大きく揺れるものが、り倒壊しやすいことになります。「非常に重たい」「重たい」建物を軽量化することは、非常に有効な手段です。土葺瓦をスレートにして、軽量化を計れば、かなりの効果が期待できます。

屋根の軽量化ー現状 
 現状

洋瓦であり、評価としては、「非常に重たい建物」となっています。

屋根の軽量化ー瓦めくり 
 瓦めくり

瓦と土を全て撤去しているところ

屋根の軽量化ー構造用合板貼 
 屋根下地(構造用合板)貼

瓦を撤去後、屋根下地として、構造用の合板を貼ったところ

屋根の軽量化ースレート葺き 
 スレート葺き

屋根を軽量化するために、軽いスレートを葺いているところ

屋根の軽量化ースレート葺き完成 
 完成

瓦葺きからスレート葺きの葺き替えが完成。これで、評価は、「軽い建物」となりました。

 

劣化改善

 建物を維持していく上で大切なことは、いかにして、雨をしのげるかということです。外部から水が浸入すると、柱・梁・土台を腐食させることになります。また、白蟻発生の原因となり、白蟻に食われてしまうと、全く、強度がなりくない、地震が起きるとその部分から崩壊することになります。
 この水の浸入により木材が腐食し、どんどんと劣化して、倒壊ということにならないように、劣化を部分を改善して、水の浸入を防ぐことが耐震化には非常に有効です。水は、屋根・バルコニー・開口廻り・外壁などあらゆるところから浸入します。少しでもひび割れや隙間などがあれば、それを塞いで、二度と浸入しないように対策することが必要です。

外壁ひび割れ補修

 外壁にひびが入っていれば、その部分から水が浸入します。外壁から入った水は、防水紙を伝って、梁や土台・柱などに溜まります。もし、防水紙が破れていたり、劣化、隙間などあると、その部分からも、さらに内部に侵入します。梁や土台・柱などに溜まった水は木を腐食させ、大地震時の倒壊の原因となりますので、水が浸入しないように防水処理をすることが必要です。

劣化改善ー外壁のひび割れ現状 
 現状

外壁は、いたる所にひび割れが発生している。外壁からの雨漏りは、確認されていません。

劣化改善ー外壁のひび割れ溝はつり 
 ひび割れ溝はつり

ひび割れしているところにダイヤモンドカッターで溝を掘り込みます。

劣化改善ー外壁のひび割れコーキング 
 ひび割れ部分にコーキング打設(完成)

溝はつりして、溝をつくったところにコーキングを打設して、防水処理をします。

バルコニー廻り雨漏り補修

 バルコニーにおいては、笠木・手摺と壁の取り合い、排水口廻り、防水自体の劣化によるものが原因となり、その階下は、雨漏りがよく発生します。劣化を見つけたり、雨漏りが起きたとなると、すぐに修繕することが必要です。

バルコニー劣化改善ー現状 
現状

バルコニーより雨漏りして、階下の和室天井から雨漏りしています。 

バルコニー劣化改善ー笠木現状 
バルコニー笠木現状

笠木は、かなり劣化していて、コーキングも劣化して、ひび割れしている。壁との取り合いから雨漏りしている可能性が高い。

バルコニー劣化改善ー笠木腐食 
 笠木を撤去

笠木を撤去してみると、水が廻って、下地は完全に腐食しています。

バルコニー劣化改善ー笠木取り替え 
 笠木下地の取り替え

腐食している部分を撤去して、新しく下地をやり替えます。

バルコニー劣化改善ー笠木防水 
 笠木下地の防水処理

やり替えた下地に防水紙を巻いて、防水処理をします。

バルコニー劣化改善ー笠木防水やり替え 
 完成

バルコニー廻りの劣化している笠木、防水をやり替えました。

基礎のひび割れ補修

 基礎にひび割れがあると、その部分から水が浸入し、水が浸入すると鉄筋まで達すると、鉄筋が腐食して、強度が落ちるということになります。ですので、基礎にひび割れがあると、そのひび割れに防水剤を注入して、防水性を高めて鉄筋を保護します。

劣化改善-基礎ひび割れ補修エポキシ注入完了 
 現況

基礎にひび割れがはいっている。これを放置しておくと、この部分より水が浸入し、鉄筋が腐食するので、補修をします。

劣化改善-基礎ひび割れ補修エポキシ注入 
 エポキシ樹脂の注入

ひび割れ部分にエポキシ樹脂を注入します。

劣化改善-現況基礎ひび割れ 
 完了

エポキシ樹脂を注入しました。これにより、水の浸入は無くなり、鉄筋の腐食防止となります。

 樋は、屋根に降り落ちた雨水を排水させる役割を担っています。それが、劣化して、特に樋が外れていたり、割れていたりしていると外壁を伝って、直接、窓廻りの隙間やクラックなどから、家屋内部に浸入することになります。そうなると、柱・梁などの構造材が腐食して、耐震強度が落ちることになるので、劣化しておれば、取替えが必要です。

劣化改善-樋の取替え現況 
現況

樋は劣化して、塗装はめくれています。樋受け金物を付けている釘も外れ、樋が垂れているところがあります。

劣化改善-樋の取替え現況 
現況

樋は劣化して、塗装はめくれています。樋受け金物を付けている釘も外れ、樋が垂れているところがあります。

 

劣化改善-樋の取替え 
取替え完了

軒樋、縦樋共に取替え完了。 

劣化改善-樋の取替え 
取替え完了

軒樋、縦樋共に取替え完了。 

 

 

基礎の補強

 建物を支えている基礎は、しっかりとしていることが前提です。特に地盤が悪い場合は、いくら基礎から上の部分を補強したところで、基礎が破壊されてしまったら、建物も倒壊してしまいます。
 また、耐力壁を設置するところに基礎がないと、耐力壁の効き目はありません。基本的に耐力壁を設置する部分には、しっかりした基礎がなければなりません。基礎に鉄筋が入っておれば、さらに耐力を期待できます。

基礎の補強-解体後 
床を解体

床を解体しました。 

基礎の補強-アンカー打設 
アンカーの打設

既設基礎の側面にアンカーを打設しました。これにより、新たに設置する基礎と既存の基礎とが一体化します。 

基礎の補強-鉄筋組 
立上り鉄筋組

アンカーを打設して立ち上がりの鉄筋を組んでいます。 

基礎の補強-ベースの鉄筋組 
ベースの鉄筋組

ベース部分の鉄筋を組みました。

基礎の補強-コンクリート打設完了 
コンクリート打設完了

立上りとベースにコンクリートを打設して完成です。 これにより、新築同等の基礎となりました。

 

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