耐震診断の方法:一般診断(その3)・・・「耐力壁の使い分け」
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前回、耐力壁の種類について、説明しましたが、さらに詳しく、今回は、使い分けについて、説明したいと思います。
まず、耐力壁は、大きく筋かいと構造用の合板がある。筋かいの中にもサイズの大きさとそれをダブルで入れるのか、シングルで入れるのかで強さが変わり、構造用の合板も種類、釘の打ち方により強さが変わると説明しました。それでは、どのように強さが変わるのでしょうか。
耐力壁の強さを表すのに壁倍率という言葉があります。これにより、壁の強さを知ることができます。まずは、壁倍率が1.0倍と言いますと、これは、壁長さ1m当たり1.96kNの水平荷重(横からの力)に抵抗できることを意味します。少々、難しい表現ですが、この値が高いほど、強く、大きな水平荷重に耐えることができることを意味します。通常、木造の在来工法では、壁倍率を0.1~5.0の範囲で定めています。
それでは、幅90mm、厚み30mmの筋かいをシングルで入れた場合の壁ならば、この壁倍率は、いくらかと言いますと、1.5倍です。つまりは、90×30の筋かいがシングルで入っている壁の長さが1mあれば、1.96kN×1.5=2.94kNの水平力に耐えられるということになります。1kNは、O.102tですので、0.299tonの力に耐えることができるということになります。90×45の筋かいがシングルで入っている壁倍率は2.0、これが、ダブルになると4.0となるわけです。
構造用合板の場合は、どうでしょうか。構造用合板は、例えば、厚み9mmの合板であれば、壁倍率は、2.5倍です。これが表と裏の両面に貼ってある壁ならば、その倍の5.0倍となるわけです。同じ、1mの壁であるならば、筋かいよりも、若干、構造用の合板の方が強いというわけです。この構造用合板は、釘の種類、打ち方でも倍率が変わってきます。例えば、100mm間隔で釘を打つ場合と、200mm間隔で倍の量の釘を打つ場合と比べると、倍の量の釘を打っている法が強いのは当然ですね。また、釘の種類や打ち方に関しては、後日、説明する機会があるかと思います。
こんな感じで耐力壁は、いろいろな種類があるのですが、これをどう使い分けているかでその家の強さが変わってくのです。ですから、耐震診断では、どのような耐力壁がどこに入っているかを知ることが非常に重要なわけです。
次回は、これらの耐力壁の配置について、お話しをします。
by Tadashi Yasumizu 2016.03.08