手摺の足元のコンクリートが剥がれている

 昨日は、知人からの依頼で大阪にあるマンションの調査に行ってきました。

 その依頼の内容は、知人が、そのマンションの理事をやっているということで、そのマンションの住人のバルコニー手摺の足元のコンクリートが剥がれ落ちて、鉄筋が見えているから、その原因と補修方法を調査して欲しいというものでした。

 実際に行ってみると、確かに手摺の足元コンクリートに複数のひび割れが見られ、ひび割れの大きい部分は、剥がれ落ちて、鉄筋が露出していました。そして、その鉄筋は、錆びています。

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 バルコニー足元のコンクリートには、複数のひび割れが見られる

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 ひび割れが大きくなると、コンクリートが剥がれ落ちて、鉄筋が出てくる

 この現象は、コンクリートが爆裂している、と言うのですが、なぜ、このようなことになるのかと言えば、施工中の鉄筋とコンクリートのかぶりが通常よりも薄かったということです。解りやすく言うと施工不良でしたということです。

 鉄筋が外気に触れて、錆びないようにするためにコンクリートを巻いて、その鉄筋を保護します。その保護する厚み(かぶりと言います)が、通常でしたら、4,5cmなければなりません。ところが、この件については、下の写真の通り、1cm程度しかなかったのです。

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 爆裂して、剥がれ落ちたコンクリートの破片を見ると、その厚みは、1cm程度しかない

 鉄筋は、コンクリートの中では、酸性の膜で覆われ、保護されています。コンクリートは、アルカリ性であり、これが空気に含まれてる炭酸ガスに触れると化学反応を起こし、アルカリ性が失われ、中性化していきます。コンクリートのかぶり厚さが薄いと中性化する速度が早くなり、中性化すると鉄筋の酸性の膜を破壊してしまうのです。
 
 その膜を破壊すると、鉄筋は錆びてしまい、鉄筋が錆びると体積が膨張して、その部分のコンクリートを押し出して、ひび割れを生じさせ、挙句は、爆裂を起こし、コンクリートが剥がれ落ちてしまいます。
 これを放置しておくと、ますます、鉄筋の腐食が進み、その部分の強度は、落ちてしまいますので、危険ということになります。ですから、このような現象を発見すると早目に補修することが大切なのです。補修方法は、専用の補修材がありますので、それを塗り直すことになります。

 なぜ、このような施工不良が起きるのかというと、コンクリート打設時にかぶり厚さが適切に確保できているかどうかの十分なチェックができていなかったということです。工期に追われ、その時間がなかったのか、それとも、予算がなくて、チェックする人員の確保ができなかったのか。注意力に欠けていたのか。

 このような事を防ぐためには、無理な工期を設定しないこと。余裕をもって、コンクリート打設できるようなしっかりした工程を組むことです。また、十分なチェック体制がとれるように常時、監理者を配置し、細心の注意を払うこと。それには、十分な工期と予算が必要です。予算をけちるようであれば、ロクな仕事ができません。補修ともなると、けちった事により、余計な金が必要になるということです。建物のためにも良くはありません。

 しっかりした施工計画、十分な予算、注意力。これは、良い建物を造るには、非常に重要な事と改めて、思い知らされました。

 by Tadashi Yasumizu 2016.01.16

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