鉄骨造の事務所ビル調査に行きました。
← トランシットで建物の傾きを調べる
神戸市灘区に鉄骨5階建ての事務所ビル調査に行きました。築40年程度の建物ですが、あまり手入れをされていないようで、よく傷んでいました。
鉄骨造の場合でも、耐震診断するにあたり、木造の場合と行う調査というのは、ほとんど同じです。一番、最初に行うことは、図面・構造計算書それと、検査済があるかどうかの確認です。もし、図面・構造計算書が無ければ、現地状況を調査して、その状況の図面を起こすことが基本になりますので、かなり、大変になります。図面を起こしたら、それを構造計算して、耐震性があるかどうかのチェックが必要となります。
図面・構造計算書があって、検査済がないようでしたら、現地状況が図面通りにできているかどうかのチェックが必要となります。そして、構造計算も再度、行います。検査済まであれば、図面・構造計算書通りにできているという証明になりますので、あとは、現地の劣化状況をチェックするだけで済みますので、作業的にかなり楽になります。
← 天井点検口より部材の寸法を測る
今回の場合は、、図面・構造計算書はあるけれども、検査済が無いというパターンですので、図面通りに現況ができているかどうかのチェックを行いました。それには、梁と柱の断面サイズ、接合状況のチェックが必要となります。そのために、各フロア2か所程度、柱頭付近に天井点検口が必要となります。
← 梁のサイズが図面通りかを確認
通常、設備用の点検口はあるのですが、耐震診断用の点検口はないのが普通なので、大工さんに点検口を開けてもらいながらの作業になります。調査したところ、幸いにも、図面通りにできていて、接合状況も問題無しといったところです。
次に行うことは、建物が傾いていないかどうかのチェック。建物が高い場合は、建物の屋上パラペットからトンラシットを降ろして、下部でその誤差を見るのが一番、正確かと思います。建物が低い場合は、下げ降りを降ろしますが、高いと、風で揺れるので、あまりお勧めできません。この建物の場合は、あまり、誤差なく、倒れていません。地盤はしっかりしているようです。
← 屋上の防水状況を確認
その次に行うことは、劣化調査。やはり、一番、怖いのは、雨漏りです。木造でも鉄筋コンクリート造でも場合も同じなのですが、雨が中に入ると、構造躯体を腐食させ、劣化し、耐震性は当然ですが、劣っていきます。大地震がきた場合には、倒壊の危険性が大きくなります。この建物の場合は、いたるところに雨漏り跡とひび割れがあります。
← ALC版の継目のコーキングは劣化して切れている
雨漏りの原因は、屋根(屋上)と外壁、サッシュ廻りです。鉄骨の場合であると、屋根(屋上)は、たいてい、陸屋根ですので、防水や笠木廻りが劣化するとすぐに雨漏りを起こします。外壁は、ALC版ですので、その継ぎ目部分のコーキングが劣化すると、すぐに水が浸入します。サッシュ廻りにしても同様で、コーキングが劣化するとすぐに雨漏りを起こします。
← サッシュ廻りのコーキングは劣化して切れている
← コーキングが切れるとすぐに水が浸入する
この水が骨組み部分まで達しなければ、まだ良いのですが、柱・梁に溜まるとすぐに腐食して、当然のごとく、その部分の強度は落ちてしまいます。写真を見ていただければ、解りますが、いかにも弱いですね。
← 梁・柱が漏水により腐食。こうなると強度が落ちる
これらの水漏れ、劣化を防ぐにはどうしたら、いいのでしょうか。それは、やはり、日頃からのメンテナンスしかありません。法律では、このような事務所ビルでは、3年に一度、定期点検をしなければなりません。そして、悪いところがあれば、是正する。これを放置すると、建物は劣化し、大地震がくると破壊されやすくなります。また、こまめに補修していると、修繕に費用が少なくてすみます。経済効果も大きくなるのです。ですから、建物のオーナーの人は、日頃からきちんんと点検をして、悪い部分は、修繕する。この姿勢を怠ってはいけません。
by Tadashi Yasumizu 2016.09.09