床下基礎開口が白蟻業者に勝手に斫られた
←斫られた基礎
床下の立ち上がりコンクリート基礎が白蟻業者によって、防蟻工事をするために勝手に斫られたから見て欲しいと連絡があり、調査をしました。見ると、もともと、風通しを良くするために開いていた開口だったのですが、人が通れないために30cmほど、斫られていました。そして、鉄筋も切断してあり、斫られた部分の両側には、その鉄筋が露出しています。
これは、まずいですね。開口を開けると、他の部分より弱くなり、大きな地震がきた場合には、その部分から壊れていくことは、誰でも解ることかと思います。それを防ぐために最近では、立上り基礎に開口を設ける場合は、その開口の廻りに補強鉄筋を入れて、補強することになっています。ところが、開口を大きくするということは、その補強鉄筋までも切断してしまうということになります。
問題は、その補強鉄筋を切断すると、どれだけ弱くなるかということです。これに関しては、その実験データーが職業能力開発総合大学校建築専攻教授の横濱茂之氏により、公開されています。参考までに、その実験データーは、http://www.uitec.jeed.or.jp/images/journal/23-7.pdf でご確認下さい。
これによると、健全な状態の基礎と比較して、「布基礎立ち上がり部を、はつり工事で破壊後放置すると、健全な布基礎の16%程度まで耐力が低下する。」ということが証明されています。つまりは、大地震が発生した際、無計画に斫られた部分の基礎は、健全な部分に比べ、84%の確率で破壊されることになり、大変、危険な状態になっています。
それでは、鉄筋が切断されてしまったら、元には戻らないので、どうすればいいのかというと、一つの補強例としては、開口廻りを鉄板等で補強することです。これには、根拠ある構造計算も必要になってきます。また、再度、鉄筋を出して、溶接して、コンクリートを打設し直しをする方法もあります。
いずれにしても、このように白蟻業者により、自分達の工事をやりたいがために、無計画に鉄筋を切り、訴訟になるというのは、結構あるようです。このようにならないためにも、最初から、防蟻工事をやることを前提に人が通れるだけの開口を最初から開けておくことは、非常に大切なことです。もし、開いていない場合には、立上りコンクリートを斫るのではなく、各区画ごとに床下点検口を設けて、床下全体が点検できるようにするのがよいのではないでしょうか。
by Tadashi Yasumizu 2017.03.01