天井からコンクリートが落下した。
← 天井裏を見ると、天井からコンクリートが落下している。
天井からボロボロと物が落ちる音がするから見て欲しいという依頼で調査をしました。押入れの天井点検口から浸入して、見ると、写真のように天井からコンクリートが落下しています。これを住んでいる人が見ると、この家は大丈夫?と心配しまね。
天井からコンクリートが落下する原因は、色々ありますが、最も多いのが、コンクリートのかぶり厚さ不足による中性化です。と言っても、どのようなものか、よく解りませんね。ここで、できるだけ解るように説明します。
まず、コンクリートのかぶり厚さとは、鉄筋を覆っているコンクリートの厚さのことで、コンクリートの表面から鉄筋までの距離のことをいいます。これが短いと鉄筋が錆びやすくなり、鉄筋が錆びると膨張して、コンクリートを押し出して、コンクリートが剥がれて、落下します。
コンクリートの中性化とは
ここで、コンクリートの中性化について説明します。鉄筋は空気中に放置すると簡単に腐食するのですが、コンクリート中では腐食しません。コンクリートは、高いアルカリ性に保たれていて、この高いアルカリ性の中では、鉄筋は錆びることはありません。ところが、コンクリートの表面の水酸化カルシウムは、空気中の二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムを生成すると、アルカリ性が失われていきます。これがコンクリートの中性化といいます。中性化はコンクリート表面より進行し、鉄筋まで達すると、その鉄筋を腐食させます。鉄筋を覆っているコンクリートの厚さが小さいと、中性化の速度は速くなります。逆に、大きければ、中性化の速度は遅くなります。つまりは、コンクリートのかぶりが小さかったために鉄筋が腐食して、コンクリートが落ちたということです。
かぶり厚さを確保するために、スペーサーを適切に入れることが大切
でも、ここで大切なことは、この処置のしかたと防止策です。私が目指しているのは、防止策ですので、それについて、お話しをしたいと思います。まず、鉄筋コンクリート造の場合には、下の写真のように鉄筋を組みます。
鉄筋コンクリート造の住宅でスラブの鉄筋を組み終えたところ
鉄筋を組み終えると、このスラブ底の型枠の合板から鉄筋までの距離がきちんと確保できているかどうかをチェックします。この距離を確保するためにスペーサーというものを使用します。スペーサーには、スラブ・土間用のもの、壁・梁・柱用のものがあります。スラブ・土間用のものは、サイコロ、腰掛とも言います。壁・梁・柱用のものは、ドーナツとも言います。
スラブ底(型枠合板)と鉄筋までの距離(コンクリートかぶり厚さ)を確認する。
壁の鉄筋組の場合は、ドーナツと呼ばれるスペーサーを取り付ける。白いドーナツ状のものです。
コンクリートのかぶり厚さは、部位により異なる
これらをきちんと取り付けすることにより、かぶり厚さが均等に確保できるようになります。このかぶり厚さは、建物の部位により厚さが決まっています。例えば、一般的な壁やスラブであると、30~40mm、これが、土に接する部分であると40~50mm、基礎であると60mmというように部位により異なります。
コンクリートを打設す前、少なくとも、一日前には、鉄筋を組み終え、このスペーサーがきちんと設置され、かぶり厚さが確保できているかどうかを確認する必要があります。これが、できていないと、すぐに是正します。この確認がきちんとできておれば、コンクリートが落ちるということはないのです。
ここでも、確認作業というのが、いかに重要であるかが、よく解ります。
by Tadashi Yasumizu 2019.07.14