設計・監理と施工が分離か、設計・監理と施工が一貫か
質問内容
設計から施工まで、一貫してやっている工務店に注文しているのですが、工事監理業務は、別にした方が良いのでしょうか?
回 答
工事監理とは
工事監理とは、建築士法により「工事監理(こうじかんり)とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。」と定めています。わかりやすく言いますと、設計図通りに現場ができているかどうかをチェックすることです。そして、もしも、設計図通りにできてないと工事監理者が判断した場合には、施工者に是正指示をして、もしも、是正しない場合には、建築主にそれを報告することとなっています。
設計・監理と施工が分離か、設計・監理と施工が一貫か
住まいづくりの進め方として、設計・監理分離か、設計・監理一貫かというのがあります。設計・監理と施工が分離というのは、設計監理者と施工者が別で、それぞれ、別に契約して、お互いに利害関係の無いものが設計・監理と施工を分けて行うことを言い、設計・監理と施工が一貫というのは、設計監理者と施工者が同一のことを言います。
設計・監理と施工が分離のメリットとデメリット
メリットとしては、施工者の工事の進捗を施工者と利害関係のない工事監理者がチェックするので、手抜き、欠陥工事の発生率が少なくなります。工事監理者に見られているという認識が現場に生まれるので、現場で緊張感が生まれます。
施工者は、工事監理者に施工計画等を事前に説明するために施工図、施工計画書など作成します。その書類の内容を事前に工事監理者がチェックするので、ミスが減ります。また、要所、要所で工事監理者が現場で図面通りかをチェックするので、欠陥の発生率が少なくなります。
工事記録写真は、施工者が工事監理者に提出するために、数多く撮影されます。写真には、杜撰な工事、誤った工事は映せないため事前のチェックが確実に行われます。そして、工事状況が確実に残っていきます。
特に見え隠れする部分の工事状況を残すことは、後々、万が一、トラブルになった場合、そのような図面・書類・写真は、原因・責任解明には有効です。
デメリットとしては、施工図、施工計画書など作成するための手間・時間・費用がかかり、割高になります。また、建築主にとっても、契約を設計・監理と施工と二本立てで行うことになり、手間暇がかかります。しかし、後々のトラブル発生率が下がることからすれば、決して高いものではありません。
問題は、設計監理者がいい加減で、経験が少ない、知識に欠けるとなると逆に現場に混乱が生じます。建築主は、信頼できる設計監理者を慎重に選任しなければなりません。
設計・監理と施工が一貫のメリットとデメリット
仮にも、これが、設計施工を一貫して行っている工務店に全てを任せたらどういうことになるのでしょうか。見え隠れする部分がどうなっているのか解らないため、別に工事監理者がいたならば、見え隠れする部分もきちんとチェックするのですが、施工者に任せてしまうと、仮に不具合と解っていても、予算が無い、工期が無い、不具合が会社に知れたら具合悪いなどと悪い条件が重なってしまうと、そのまま、手直しをすることなく、進めてしまうということもありうるのです。
メリットとしては、信頼性が高い施工者であれば、施工図、施工計画書など作成することなく、通常のやり方でできるので、手間がかからない、時間がかからない、現場がスムーズに進むということも言えます。
第三者工事監理とは
設計・監理と施工が一貫である場合、現場がスムーズに進むことがある反面、欠陥が発生する可能性が高くなるというのは、以上に述べた通りです。それでは、それを少しでも、防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか。そのためには、信頼のおける工事監理者を別に定めることです。
それが、法律的な工事監理者でなくても、施主の代理で図面をチェックしたり、現場に行って、図面通りにできているかをチェックすることは可能です。もし、不具合があれば、それを建築主に報告するという内容のものです。このように外部から、工事監理者をつければ、欠陥が発生する率は格段に下がります。