若いうちは、年をとってから考えると思いがちですが、老いは、駆け足でやってくるのです。また、思いがない事故で身体に障害を負うこともあります。今は、全く気にならないちょっとした段差・急な階段・狭い廊下などに危険が、いっぱい潜んでいます。高齢になっても、安全に快適に暮らせるように新しい住まいを建てる際に、今から考えておく必要があります。
敷地の選定
バリアフリーの住宅を考えるときには、敷地は、できる限り平地を選びます。足腰が弱ったときは、坂道を登る事がきついし、坂道は車椅子に走行しづらいものです。急な勾配の坂道は車椅子から落ちることもあり、坂道の勾配、つまりスロープの勾配にも限界があります。高齢者にとっても坂道の登り降りはきついと思います。
また、公道と敷地の高低差は、できる限り無いほうが良いです。スロープの勾配をゆるくするために広い敷地なら問題はないのですが、敷地が狭いとスロープを設置できなくなります。どうしても、高低差がある場合は、リフトなどの設置を考えます。できる限り外出しやすい敷地を選ぶことが大事です。
高齢者・障害者への気配り
高齢になると、足腰が衰えてきます。歩くことが不自由になり、足を引きずって歩くようになりますので、少しの段差も気になります。和室の場合ですと、廊下と敷居の間に数cmの段差があるのですが、そういう段差でも足をつまずかせて、転倒することも多々考えられます。和室の敷居の段差をはじめ、トイレ、浴室などの敷居は、できる限りなくすようにしましょう。
歩行が不自由になると、手摺が必要になってきます。手摺は連続して通路の両側に設けるようにします。高さは、床から70cm〜75cmくらいが適当です。玄関の上り框の昇り降りや、便所・浴室でのしゃがみ込みと立ち上がりにも、姿勢を安定させるために握り棒を取付けます。
また、高齢者・障害者にとって、火事や地震などの災害は、一人で逃げることができないので、こわいものです。床材などは、できる限りすべらないものを選び、安全には、特に注意します。防犯にも充分、注意が必要です。
車椅子使用のための設計
調湿効果をもつものとして、畳があります。藁を芯にして、表面にイグサを使った畳は、非常に優れた調湿効果を持っています。畳の上に布団を敷いて寝る場合は、人体から布団に移った水分を畳が吸収し、布団をたたむと適度に乾燥してくれるので、布団をそんなに干さなくても快適です。
しかし、こうした畳も湿気を持つとダニの温床となってしまうので、現在は、防虫防ダニ加工をされています。これが、人体に有害な物質が含まれています。こうなったのも、住宅の湿気が増したことが原因なので、通気性のある住宅で、室内が乾燥した状態ならば、畳は、非常に優れた調湿効果のある材料と言えます。
高齢者・障害者への気配り
高齢者になると、車椅子に頼る事も考えなければなりません。その車椅子が使えるようにするためには、段差をなくすことです。入り口の敷居などの段差もとります。
木造住宅の場合は、アプローチからの土間と玄関ホールとは、40cmくらいの段差がありますが、スロープ等のスペースがとれない場合は、リフトをつけるとか、裏から入れるように工夫をします。
車椅子が通るためには、80cmくらいの幅が必要です。ドアなどの曲がり角では、85cm必要です。180度回転するためには、150cmの回転直径が必要です。
ベット・浴槽・便器・椅子などは、車椅子の高さに合わせて設計することが大事です。テーブル・キッチン・洗面台なども車椅子に座ったまま作業できるように70cmくらいに合わせます。また、収納・スイッチ・コンセントなども座ったまま、手の届く範囲で使用できるように注意します。
各部屋の設計
便所において、便器は、動作が楽で膝を曲げなくてすみますので洋式を使用します。また、暖房便座・ウォシュレットも付けます。手摺は、便座の両側につかまるための横手摺や立ち上がるための縦手摺を取付けるようにします。また、洗面所と隣接させ、引き戸で間仕切りをしておくと広く使えます。
浴室は、安全のために濡れてもすべりにくタイルや石を使います。浴槽に入るための手摺の設置も必要です。浴槽は、洗い場から40cmくらいの高さにしておくと入るのが楽です。また、浴槽の縁に腰掛けるためのベンチを置いて、そこにいったん腰掛けてから入れるようにすると、入浴しやすくなります。洗い場の広さは、車椅子が回転できる広さが必要です。
寝室・リビング・台所を段差のないフラッターレールの引き戸として、ワンフロアーになるようにすると介護が必要なときにすぐに来てもらえるので便利である。
寝室は、ベットを置く必要があるので、フローリング貼とします。ベットの上で排便することもあるので、換気扇は忘れずに付けるようにしましょう。コンセントは、できるだけ多くして延長コードなどが床に這わないようにします。雨戸は、電動式リモコンとし、蛍光灯なども、リモコン式にしましょう。
また、バリアフリーの部屋は、できる限り1階にもってくるようにしましょう。どうしても、できない場合でしたら、エレベーターやリフトを取付けます。
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