住まいづくりの基礎知識

 INDEX

●はじめに
●住まいづくりの第一歩
●基本的な考え方
●費用のチェック
●建物と費用の関係
●資金の調達
●土地の準備
●どこに頼むのか
●建築士の仕事と報酬
●建築の法律
●間取りと部屋の計画
●図面の見方
●見積書の見方
●施工会社の選び方
●工事契約の仕方
●建築の式典
●工事が始まってから
●引渡し
●地震に強い家
●バリアフリー住宅
●シックハウス症候群
●家相について
●3階建住宅
●二世帯住宅
●木材の知識
●外観のデザインと材料
●内装の材料
●断熱と結露
●住宅の品質保証
●万一のトラブルの時に
●電気設備について
●水まわりの設備
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  万一のトラブルの時に
 

 細心の注意を払ったにもかかわらず、万が一、トラブルが起こったときどうしたらいいのでしょう。せっかく築いた建築家、工務店との人間関係をくずしたくない、これから、お付き合いしてゆく近隣の人達ともうまくやってゆきたい、しかし・・・という事も多々あることと思います。こういった時にどうすれば、うまく解決し、せっかくのマイホームに気持ち良く住むことができるのか、法律の観点からその対処法をQ&A形式にて解説したいと思います。



工事中のトラブル

  1. 工事が約束の期日までにできないとき
  2. ずさんな工事が発覚したとき
  3. 施工会社が建築主の注文に応じないとき
  4. 工事中に業者の過失により火災、破損などの事故が生じたとき
  5. 工事中に業者が倒産したとき
  6. 違法建築が発覚し、工事中止を命じられたとき
  7. 出来上がったもののイメージが全く気に入らなくて、どうしても変更をしたいとき


 1.工事が約束の期日までにできないとき

 業者へ再三の催促をしているにかかわらず、どうしても約束の期日までに竣工できないということです。どうしたらいいのでしょうか?
 
 請負人が約束の期日までに竣工させなければならないのは、当然の義務ですが、天災などの不可抗力により間に合わない場合には、いち早く建築主に理由を述べて、期日の延期を求めることができ、建築主は、それに応ずるべきです。
 しかし、請負人の都合により、期日までに出来上がらないというのは、それ相応の賠償を求めることができます。問題は、契約時にどのような取り決めにしたかであり、その取り決めに従って、賠償を求めることになりますので、契約時にそのことは、はっきりと決めておくべきです。
 建築主の方で、支払いが遅れたり、施工会社の要求する期日までに当然に決めなけばならない事を決めなかったり、支給材料の供給が遅れたりして、竣工が間に合わなかった場合は、建築主の責務不履行なので賠償を求めることはできません。

  
 
 2.ずさんな工事が発覚したとき

 建築中に現場に行っているのですが、どうみても契約時における仕様書、見積書通りに現場が進んでいないように思われ、警告するのですが、全く、応じてくれる気配はありません。どうしたらよろしいでしょうか?
 
 考えられる方法としては、都道府県建設工事紛争審査会という解決機関に申し出て、あっせん、調停、仲裁のいずれかの手続きに従って紛争の解決を図ります。
 次の方法としては、建設業法の定めに従って登録してある業者なら、建設大臣や知事の監督を受けており、知事は建設業者が契約について不誠実な行為のある場合には、その業者に対して指示という形で一定の命令を出せることになっています。その指示に従わない場合には、営業停止処分を命じることができますので、それに従うと良いでしょう。
 最後の方法として、請負契約を解除することになります。しかし、この場合には、すでに工事を行った分の代金をどうするかという問題が発生します。
 いずれにしても、個人では、対応しきれないと思いますので、法律家なりの経験のある専門家に依頼しその判断をしてもらうべきでしょう。

  
  
 3.施工会社が建築主の注文に応じないとき

 建築中に現場に行くと図面上では気が付かなかった事が出てきて、いろいろと注文をつけるのですが、契約の予算からすればとても出来ることでは無いという事で、注文に応じてくれません。どうすれば良いでしょうか?
 
 基本的に契約内容以上の注文をしてはいけません。請負業者の義務としては、契約内容の事を誠実に守り、行った仕事に対して注文者は、報酬を支払う事が義務となっていますので、契約内容以上の注文をした場合には、追加金は支払わねばなりません。しかし、契約内容の範囲内での注文であれば、請負人は、その注文に応じる義務があります。また、その注文に対する追加金は支払う必要もありません。
 問題は、注文をしている内容が契約時の見積に含まれているかどうかです。よく、見積書では、1式とかかれていてどこまでの工事が含まれるのか曖昧なところがありますので、そういう曖昧さをはっきりとさせて契約すべきです。
 

 
 4.工事中に業者の過失により火災、破損などの事故が生じたとき

 工事中に職人の不始末で7割がた焼けてしまいました。工期に間に合わないどころか、再開するにも金が無いと言って、再開する気配はありません。どうすれすれば良いのでしょうか?
 
 竣工前における火災は請負業者の責任となり、請負業者は、契約通りに完成させなければならない義務があります。台風などの暴風雨でも同じで建物が破損したりした場合は、法律上は、請負業者の責任で完成させなければなりません。
 また、職人の不始末から期日が間に合わなくなったというときには、請負業者は、建築主に違約金を支払わなければなりません。
 しかし、引渡し後の焼失は、たとえ請負業者の不始末であっても建築主の責任となり、請負業者は、立て直す義務もありませんし、請負代金も建築主に請求できる権利があります。
 いずれにしても適切な火災保険は、必ず入っておく必要があります。

  
  
 5.工事中に業者が倒産したとき

 工事中に請負業者が倒産してしまいました。すでに支払った工事代金、また、残工事、メンテナンスはどうなるのでしょうか?
 
 工事直前の支払っていた着手金、また各種の申請手数料などは戻ってきません。工事中ならば、通常の支払条件は着手時3分の1、中間金3分の1、竣工時3分の1ですから過払いになっている場合が多いのです。当然、工事はストップし、また、下請業者などは少しでも回収できるものは、回収しようと工事中の家からはずせるものははずして行きます。倒産した場合、建築主はどうしようもないのが現実です。
 それでは、少しでも被害を最小限におさえるには、どうしたらよいのかという事ですが、残念ながら、決定的な方法はありません。施工会社を選定するときに、いろいろと調べて倒産する可能性が少ない会社を選び、過払いにならないような支払い方法で支払いするしかありません。しかし、現実は、何の前ぶれもなく大手でも倒産する時代ですから、保証などありません。
 残工事、メンテナンスについては、新たに請負会社を探す事になります。しかし、中途から工事を行うことは、最初からやる場合に比べ、引継ぎの部分で手間がかかったりするので、かなり割高になってしまします。
 最近では、(財)住宅保証機構の「住宅完成保証制度」というのがあります。この制度は、所定の審査を受けて登録している施工会社に工事を発注すると、万が一その業者が倒産したりした時に、建築主は、機構の選定した代替の業者に残工事を発注することができ、また、施工会社が代わったために割高になった建築費、又前払い金が戻らなかった場合の保証を行ってくれます。工事契約時に施工会社とこの住宅保証機構とそれぞれ保証契約を結ぶと良いでしょう。

  
  
 6.違法建築が発覚したとき

 よく違法建築というのを聞くのですが、違反して建築するとどうなるのでしょうか?
 
 建築基準法というのは、国民が守らなければならない最低の義務です。違反建築に対する措置としては、その建物の所有者・管理者などに対して、その建物の除去・移転・改築・修繕・使用禁止・使用制限などの違反を是正するための措置を命じられることになります。
 例えば、建蔽率違反ならば、敷地を大きくするか、建物の一部を除去しない限り是正できませんので、可能なことは、建物の一部を除去することになります。また、違反建築物の建築士・設計者・工事請負人も罰金に課せられるほか、違反是正命令を履行しない場合には、1年以下の懲役または30万円以下の罰金を命じられます。
 いずれにしても違反建築物は近隣周辺に多大な悪影響を与えるばかりでなく、地震や台風などの災害時に対しても構造上、安全でなかったり、防災上不備な建物であったりするので、決してしてはなりません。

  
  
 7.出来上がったもののイメージが全く気に入らなくて、どうしても変更をしたいとき

 工事がどんどんと進んでゆき、完成も間近になってきた頃、出来上がったものがどうしても思っていたイメージと違うものができています。やむを得ず、やり直しをして欲しいと思うのですが、その場合どうなるのでしょうか?
 
 基本的にいったん出来上がってしまったものをやり直すということは出来ません。しかし、どうしてもしなければならないのであれば、当然、やり直し費用は、発生しますし、そのやり直しの工期の延期も止むを得ません。
 問題は、その費用の負担はどうするのかということですが、契約前の打ち合わせで建築主が納得してそれで建築主の都合で変更する場合ですと、当然、かかった分だけの費用は全額負担しなければなりません。しかし、契約通りであるが、非常に曖昧な打ち合わせで出来上がってしまった物に対しては、その判断はむずかしいところです。
 いずれにしても、出来上がった物の変更というのは、美しく仕上がらないばかりか、職人の精神的なダメージも大きく、仕事に対する意欲も減退します。費用的にも割高になるので極力避けるべきです。設計士、施工者と入念な打ち合わせをする事が必要です。


隣家とのトラブル

  1. 隣家から建築物により日陰になると苦情がきたとき
  2. 隣家との境界がはっきりしないとき
  3. 工事中に騒音、埃などで隣家から苦情がきたとき
  4. 隣家と建てようとする建築物の距離はどれくらい?
  5. 建築物の高さについて
  6. プライバシーの確保について
  7. 隣との境界線上の塀について

  
 1.隣家から建築物により日陰になると苦情がきたとき

 3階建の家を建てようとしたとき、隣家から日陰になって困るとの苦情がきました。どのように対処すればいいのでしょうか?
 
 法規上では、昭和51年に建築基準法にて日影規制が立法化され、都市計画の用途地域の規制に従い建物が隣地に何時間の日影を作るのかという観点から規制を受けることになりました。これに関して、他に北側斜線制限、容積率制限、建物壁面後退制限、自治体の日照条例などで、日影規制がされています。
 これらの規制の条件を全て満たしておれば、日照権侵害にならないのですが、これらは行政上の規制値にしかすぎませんので隣家との感情問題の解決にはなりません。お互いの感情を害さないように、じっくりと話し合って、建築後も気持ちよくお付き合いが出来るようにしなければなりません。

  
 2.隣家との境界がはっきりしないとき

 工事が始まり、建物の形が出来てきたのですが、屋根が出来たときに、軒の庇が隣家との境界から出ているとの苦情が来ました。境界線より内側に建てたつもりなのですが、どうしたらよいのでしょうか?
 
 まず、隣家との境界をはっきりさせることが必要です。そのためには、土地の図面や土地の周囲の状況などを十分に調べたり、隣人をはじめ、必要によってはそれよりもっと前の地主などに事情を詳細に聞いたりします。また、測量士などの専門家に依頼することもできます。その上で、改めて隣人と交渉することです。もし、どうしても話がつかなければ、裁判所に調停を申立てるなり、境界確定の訴訟を起こしたら良いでしょう。
 しかし、こうなるのを防ぐために事前にお互いの立会いのものと、境界石などの界標を必ず設置するようにします。

  
 3.工事中に騒音、埃などで隣家から苦情がきたとき

 工事が始まったのですが、隣家から工事の音がうるさい、埃がでる、工事の作業者が家の前にとまっているなどの苦情がきます。どう対処したらよいでしょうか?
 
 基本的には、施工業者の責任で解決すべき問題です。しかしながら、今後、近所付き合いをうまくしてゆかなければならないので、お互い感情問題にならないよう話し合ってうまく解決しなければなりません。工事が始まる前にきっちりと御近所に挨拶をすることを忘れないように。

  
 4.隣家と建てようとする建築物の距離はどれくらい?

 建物を建てようとするとき隣家から境界線ぎりぎりに建てているとクレームがつくとよく聞くのですが、どれくらいあければよいのでしょうか?
 
 民法234条では、境界線より50cm以上、離す事となっています。また、建築基準法65条では、防火地域または準防火地域内にある建築物で外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることが出来るとなっています。

 
 5.建築物の高さについて

 建物を建てようとするとき隣家から3階建の建物は、高すぎるとクレームがつくとよく聞くのですが、どれくらいの高さまででしたら問題ないのでしょうか?
 
 建築基準法では、第一種・第二種低層住居専用地域に建物の高さ制限10mを設けており、その他の用途地域では、この制限はありません。したがって、その対象地域が高さ制限を受ける地域であったとしても、3階建の建築物でも10mを越えなければ、法律上では問題がないことになります。しかし、斜線制限、日影規制はクリアーしていなければなりません。

 
6.プライバシーの確保について

 家が出来上がったのですが、隣家から自分の部屋が覗かれると言って、目隠しを付けてくれるよう要求がありました。どうすればいいのですか?
 
 民法235条には、「境界線より1m未満の距離においては、他人の宅地を観望すべき窓又は、縁側を設ける者は、目隠しを附する事を要す」と規定されていますので、取り付ける義務があります。

 
 7.隣との境界線上の塀について

 隣家との境界線上に塀を設置したいのですが、費用などの負担はどうすればよいのでしょうか?
 
 民法226条より、囲障の設置及び保存の費用は、相隣者と平等負担となります。しかし、この場合は、隣家と協議が成り立った場合のことですので、協議が成り立たずに立派な塀などをつくった場合は、つくった方がその費用を負担することになります。



竣工後のトラブル

 1.竣工してすぐに欠陥が発見されたとき

 念願のマイホームが完成しましたが、入居後すぐに雨漏りをして、外壁にひび割れなどが入っています。明らかに欠陥住宅なのですが、どうすればいいのでしょうか?
 
 手抜き工事、欠陥住宅などは、非常に多いのが実情でそのために瑕疵担保責任や保証制度などで建築主が保護されています。したがって、その制度により、業者に対して補修を求めたり、損害賠償を請求したりできます。
 欠陥が発見したら、すぐに業者に連絡して補修してもらいましょう。しかしながら、補修をしなかったり、応対が非常に悪い場合ならば、第三者である建築士などに見てもらい、役所の建築指導課などに相談してみましょう。それでも解決できなければ、法的手段により、紛争審査会の調停、仲裁によるか、簡易裁判所にて第三者の立場から調停をしてもらうようにします。

  
 2.契約時は、予算とおりに納まったが追加工事で法外の金額を請求された

 契約時には、無理をお願いして予算内に何とか納めるようにしてもらいましたが、工事中に追加変更工事をお願いしたところ、引渡し時にびっくりするような金額を請求されました。どうすれば、よいのでしょうか?
 
 施工会社は、契約時においては、とかく工事金額を抑えて契約します。その分、追加変更工事にどうしても上乗せという形になりがちです。もし、契約外の追加変更工事を依頼する場合には、その都度、見積をとるようにしましょう。それを了解の上で新たに工事を依頼するのが、賢明です。
 もし、万が一、そういう作業をすることなく最後に請求が来た場合は、公平な立場にある第三者の建築士などに見積書を査定してもらい、話し合うことです。それでも解決できなければ、法的手段により、紛争審査会の調停、仲裁によるか、簡易裁判所にて第三者の立場から調停をしてもらうようにします。また、設計事務所が監理している場合ですと、設計事務所が建築主にかわって、追加見積書を査定し、紛争にならないように調整してくれます。


 

提供:潟Aーキアシスト

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