シックハウス症候群とは、新しい住宅に入った家族が、食欲がない、よく眠れない、寝覚めが悪い、イライラする、のどが痛む、頭痛がする、よく風邪をひく、だるい、疲れやすい。また、アレルギーに似た症状として、湿疹、鼻炎、皮膚がカサカサする、体がかゆい、のどが痛むなどの症状がでることです。
これは、一般的に子供の方が多いのです。こうした症状の原因としては、新築の家の中には、目や皮膚を刺激する化学物質が非常に多く存在しているからと言われています。
最近の住宅には、化学物質を多量に含む建材が多く使用されており、高気密・高断熱の住宅が増えたため、強制的な換気をしない限り、なかなか外へ逃げてゆかないのです。このような状態の家で長時間生活していると、目がチカチカしてきたり、目が疲れたりしてくる。
特に最近では、合板とかビニールクロスなどに使用されている接着剤などには、ホルムアルデヒトなどのような有害な物質が多く使用されており、最近、特に増加してきたアトピー性皮膚炎の子供たちに大きな影響を与えています。
化学物質に過敏な人が家族にいる場合は、特別な配慮が必要です。どうすれば健康に良い住まいを建てることができるのか、まとめてみました。
高温多湿の日本では、木・漆喰・土壁・紙などの呼吸する素材が適していると言われています。これらは、湿気が多いと吸収し、乾燥していると湿気を出すという性質があります。基本的な考え方としては、できる限り調湿効果をもっていて、有害な物質を含んでいない自然の素材をうまく使うのがポイントです。
壁・天井の材料
最近は、合板や集成材が多く使用されています。ムク材と比べて施工しやすく、節・ひび割れ・伸縮・反りなどなく、施工後もスキや狂いがありません。見た目には、非常に美しいのですが、製造の過程で多くの接着剤が使われていますので、使用する際には、充分なチェックが必要です。
壁・天井に貼るクロスは、紙・綿・和紙などでできたクロスを貼るようにします。また、クロスを貼る接着剤も防カビ剤の入っていないでんぷん系ののりなどを使います。
また、天然素材である漆喰(しっくい)を壁の材料などに使います。漆喰は、昔からある材料で消石灰に砂やのりなどを加えて水で練ったものです。しかし、化学成分の入った漆喰もあるので、十分なチェックが必要です。
内装を板貼にするならば、塗料を全く塗っていないムクの板を使うべきです。ムクの板をそのまま使用するのが理想なのですが、手垢がついたりして汚れを気にされるのならば、天然系塗料を塗ることをお勧めします。
床の材料
ムクのフローリングなどは、割れや狂いが生じやすいのですが、健康を考えた場合、安全です。
床材としては、合板のフローリングやクッションフロア、Pタイルはできるだけ避けるようにして下さい。ムク材のように湿気を吸い込んで吐き出すような機能がないので、床下に湿気あるとカビやダニが発生しやすくなります。フローリングには、国産の杉や檜、外国産の米松やパインなどの針葉樹系がお勧めです。フローリングは、汚れや傷が付きやすいので、天然系塗料を塗るようにします。
天然リノリウムやコルクタイルなどを床材として使用する場合は、下地として合板ではなく、ムクの杉板を使用するようにします。合板ですと、床下に湿気がこもるようになるからです。やむを得ず、合板を使用する場合は、ホルムアルデヒドの放出が少ないF0かF1の合板を使用するようにします。接着剤も天然系のものを使用するようにします。
畳について
調湿効果をもつものとして、畳があります。藁を芯にして、表面にイグサを使った畳は、非常に優れた調湿効果を持っています。畳の上に布団を敷いて寝る場合は、人体から布団に移った水分を畳が吸収し、布団をたたむと適度に乾燥してくれるので、布団をそんなに干さなくても快適です。
しかし、こうした畳も湿気を持つとダニの温床となってしまうので、現在は、防虫防ダニ加工をされています。これが、人体に有害な物質が含まれています。こうなったのも、住宅の湿気が増したことが原因なので、通気性のある住宅で、室内が乾燥した状態ならば、畳は、非常に優れた調湿効果のある材料と言えます。
シロアリ駆除
また、シロアリ駆除も大きなポイントとなります。できる限り、薬剤に頼らず床下のシロアリを駆除する方法を考えましょう。考え方としては、床下からできる限り湿気をなくすことが必要です。風通しをよくするために床下を地面から40cmくらいは上げて、換気口を設けて風が東西方向、南北方向に抜けるようにして、湿気を追い出すようにします。そして、防湿シートを地盤面に敷き、防湿用のコンクリートを打ち、調湿機能のすぐれた炭を敷くようにします。また、浴室・洗面所・便所などの水廻りは、他よりコンクリートの基礎を1mは、高くするようにします。
家具やシステムキッチンについて
家具やシステムキッチンなどには、パーティクルボードや合板などが使用されていますので、多くのホルムアルデヒドなどが含まれています。できれば、総ムク材のキッチンにするとか、総ステンレスのキッチンにするようにします。高くつくようなら、大工さんに作ってもらい、ステンレスの天板、流しを貼るようにします。
押入れは
また、押入れなどにも合板が多々使用されていますが、それをムクの板材か、石膏ボードを貼るようにします。扉なども合板が使用されていますが、それをムク材として、天然系塗料を塗るようにします。どうしても、合板を使用するならば、F0かF1の合板を使用するようにします。
ダニ・カビへの対処
カビのあるところには、必ず、ダニも繁殖しています。カビは、目に見えないかたちで人の体に入り込み、アレルギーや喘息を引き起こします。また、ダニはアトピーなどアレルギーの要因なので、健康のためには、カビ・ダニをなくす必要があります。効果的なダニ・カビ対策として
- カビの発生原因の一つである結露を抑えるため、吸放熱性のある天然素材の材料を使う。
- 木造では、外壁に通気層を設け、結露を防ぐと共に、構造材の腐朽を防ぐ。
- 気密性の高い住宅では、特に通風・換気に対して24時間の計画的な換気が必要である。
健康な住まいの暖房
暖房機器が排出する燃焼ガスには、二酸化窒素などの有害化学物質が大量に含まれているため、気密性が高ければ高いほど、それらがいつまでも室内に停滞し、濃度は上昇してゆきます。また、石油やガスにはかなりの水分が含まれているので、石油ストーブやガスストーブを使用するとかなりの湿気が発生します。
エアコンは、燃焼ガスを発生させない点では、すぐれているが、対流式暖房器具のため床面に多いカビやダニなどを空中に舞い上がらせてしまうだけでなく、エアコン自身が埃、カビなどの発生源になりうることもあります。
床暖房は、エアコンのように対流を起こすことがないので、カビやダニを舞い上がらせることはありません。また、ダニは高温を嫌うため床暖房の上に敷いてある絨毯の内部に潜んでいるダニなどが苦しくなって温度が低い表面に出てくるのです。そこで、掃除機をかけると普段、退治することのできないダニまで退治できることになります。そして、床暖房は、有害化学物質を室内に排出することがないので、喘息に苦しんでいる子供がいる場合などは、お勧めです。
しかし、言うまでもなく、できる限り、機械に頼ることなく自然の環境を生かせる住まいが一番良いのは、言うまでもありません。
断熱について
家の断熱性は、高ければ高いほどよい。断熱性が高ければ、外気の影響を受けることが少なく、冬暖かく、夏涼しいということになります。また、冷暖房の効率もよくなるので、省エネにもつながります。結露は、室内の温度の低いところに発生するが、壁の断熱性を充分に高めておけば、内壁に結露が起きることはありません。
しかし、問題なのは、アルミサッシュの窓である。アルミは、熱伝導率が高い金属であり、また、ガラスも非常に熱伝導率が高い。そのため、いくら壁が断熱されていても、窓は、外気と同じ温度となってしまい、結露が発生することになります。そこで、アルミサッシュ窓の結露の防止法ですが、サッシュを断熱材入りのものにして、ガラスを復層ガラス(空気層の入った2枚ガラスのもの)にするのです。これだけで、断熱効果は、飛躍的に上がります。
また、壁にもこのような空気層を設けるようにします。よく、壁の中にはグラスウールが使用されていますが、そのグラスウールにも有害な物質が含まれています。
換気の方法
これからは、さらに高気密・高断熱の住まいが広まってゆくことと思います。そして、室内の湿度を下げてカビ・ダニの発生を防ぐには、換気は不可欠のものとなってゆきます。
最近は、住宅の密集化が進んだため、窓が小さいとか片側にしか無い場合がよくあります。これは、窓の換気を考えた場合には、最悪です。換気という点から考えると、外気一方の窓から入って、室内を通って反対の窓へ抜けてゆくといく。これが、東西南北に風の通り道があるというのが理想です。部屋の間仕切りを考えるときに、直線的に風の通り道を確保することが大事です。もし、できなくても間仕切りを引き違いの戸にすることで、通り道を確保することもできます。
また、自然の換気ができなくて、機械換気の方法を考えてみます。高気密住宅で機械的な換気を行う場合は、壁の低い位置に外気の取り入れ口を設け、換気扇などの装置は、高い位置に取付けます。室内の有害物質は、より低い位置に留まります。そこへなるべく新鮮な空気を送り込み、全体の空気を入れ替えるために換気扇を上方につけるのです。
|