建物と費用の関係
こんな家を造りたいのですが、坪いくらくらいでできますか、ということを聞かれます。これを一言で答えるには、非常に難しいものがありますが、一応の目安で答えたいと思います。家づくりの費用のチェックができたところで、それが、妥当なのかどうか、建物のグレードに対する費用はどれくらいかかるものか、参考にして下さい。
鉄筋コンクリートは、割高になる
まず、工法の違いで費用は変わってきます。木造と鉄筋コンクリート造とを比較した場合、鉄筋コンクリート造の方が材料、手間共高くなります。工期も一般的に木造よりも鉄筋コンクリート造の方が長くなるので、その分、割高になります。費用的に鉄筋コンクリート造は、木造と比べると、おおよそ2~3割くらいは高くつくかと思われます。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造とを比べると、鉄骨は、工場で全て加工したものを現場で取り付けるという工程になるため、手間がかからず、若干、安くあがると思います。最近は、木造は、プレカットと言いまして、鉄骨と同じように工場で加工する場合が多くなっていますので、安くなっている傾向があります。
建物の形状は、シンプルであればあるほど安い。
建物の形状は、壁の長さが長くなればなるほど、壁面積が大きくなるので高くなります。安くあげようと思うならば、シンプルな形状が良いでしょう。最近のはやりで、曲面の形状を好む人もいますが、曲面は、一般に15%から30%くらい高くなります。 2階建より平家のほうが割高になりますし、延床面積は、大きいものより小さいものの方が割高です。
また、立地条件にも関係します。地盤が良くなければ、地盤改良や杭を打ったりしなければなりませんし、造成などするならば、擁壁など造らなければなりません。狭小地ならば、仕事がやりにくく、その分割高になり、余分な費用はかかります。
木造で50万/坪からの家は
日本の住宅では、最低ラインが、1坪あたり50万円程度ではないでしょうか。それ以下のものであれば、気を付けた方がよいかと思います。その価格で押えようと思うならば、外壁は、乾式の材料となり、例えば、サイディング貼のような材料になります。屋根は、カラーベストのようなセメント系のような新建材となりますし、内装は、合板とか、石膏ボード貼の上にビニールクロス、浴室などもユニットバスのようなメーカーが出している普及品を使用することになります。
建具なども、塩ビ合板貼などの既製品となりますし、できる事は制限される事が多いです。家具や照明器具などは、別途となるかもしれません。しかし、最近では、新建材メーカーも、いろいろとデザイン、使い勝手なども創意工夫されており、使い方次第でいくらでも良いものはできるかと思います。
70万/坪からの家は
70,80万/坪からになりますと、少し、高級感がでてきます。外壁は、塗り壁で吹付けもそこそこのレベルのものが選択できます。既製品の建具、家具、キッチン、ユニットバスなどは、最も安いものから、グレードアップされたものを選ぶことも可能です。屋根なども、平スレートから瓦風のものを選ぶことができます。内装は、布クロスや、職人さんの手間のかかる塗り壁なども選ぶことができるかと思います。
90万/坪からの家は
1坪あたり、90~100万円からとなると、高級住宅と言えます。他の家と比べましても、際立って見えます。外壁は、部分的にタイルを貼る事もできますし、屋根も燻しの日本瓦など選択できるでしょう。建具もオーダーメイドで現場塗装が可能です。数点のオーダー家具もできるでしょう。システムキッチンなども中級レベルのものを選択できます。便所、浴室などは150角のメーカー物のタイルが貼れ、部分的に石なども貼れるでしょう。また、真壁仕様の本格的な和室をつくることも可能です。
110万/坪以上ともなるとかなりの高級品
110万/坪以上ともなると、超高級住宅と言えるでしょう。材料共、全ての面で、既製品でなく、造り付けのこだわりのあるものを使用できます。仕事、納まりにしても、手の込んだことができます。
鉄筋コンクリート造の堀込車庫の場合
それでは、地下に鉄筋コンクリート造の堀込車庫をつくり、その上に木造2階建ての家の場合でしたら、どうなるでしょうか。鉄筋コンクリート造は、木造に比べ、2~3割くらい割高になると先に述べましたが、これにさらに掘削費と土砂崩れを防ぐための土留費用が別に発生します。内装仕上げ、設備などはほとんどないのですが、この土留費用は、かなり高くつきますので、坪あたり、70万円くらいからになるかと思います。
平均的な工事金額は、坪あたり60~65万円くらいから
以上のようにだいたいの費用の説明をしましたが、日本の平均的な住宅の価格はどれくらいかと言うと、だいたい、坪あたり、60~65万円くらいです。工法は、圧倒的に木造が多く、鉄筋コンクリート造とか鉄骨造とかなると全体の3割くらいではないでしょうか。
大切な事は、ただ単純にお金をかけないと良いものができないというわけではありません。ユーザーのニーズに合わせて、必要な部分にお金をかけて、それほど必要でない部分、こだわりのない部分は簡略化する。どこにどのように効率的にお金をかけるのか、それが大事だと思います。
そして、注意していただきたいことは、安ければ良いというものではありません。よく、「うちは、絶対に他と比べたら安いです。」と自慢する工務店がありますが、決してそういうものではありません。建築は、安くしようと思えば、見えないところで安くすることは可能です。しかし、それが、一番、怖いのです。安くした分、見えない部分で手を抜いたり、無理したり、欠陥住宅になったり、後々、トラブルになるリスクは高いのです。安くなった分、最終的には高くなったということはよくあります。